尊厳死宣言を身近に意識する

延命治療を望まない尊厳死宣言ですが、やはりご家族や周りの方々に普段から希望を伝えるのが重要です。

そういった表明がない場合は、家族や周りの方々は病気が深刻な状態になればなる程、精一杯に何かをしてあげたいと思うのが常です。
特に本人が意思表示できなくなるケースで病院に搬送された場合は、殆どが延命治療を選択することになります。
延命治療の判断を自分以外の者がするのは大変に酷であることは容易に想像できます。

ですから、身近に尊厳死宣言を意識し家族に伝えるのが第一歩になると思います。

尊厳死宣言は生き方の矜持

遺言書が辞世の句であれば、尊厳死宣言は生き方の矜持みたいなものではないでしょうか。
頑固一徹の人だった、人には優しく自分には厳しい人だった、人には絶対に迷惑を掛けない人であった等々その人の生き方が、生き様が、自らの死の後に偲ばれていきます。

その人らしさを、最期に添えるのも尊厳死宣言の役割です。どんな延命治療をしてでも1日でも永く生きていたい、延命治療は断固拒否する痛みだけの緩和は最大限行ってほしい等、あなたに合った宣言が作れます。

人生の最期にあなたの矜持を示してみては如何でしょうか。

尊厳死宣言、認知症患者への胃ろう

多くの問題を含有しているのが、認知症患者の終末期における胃ろう造設です。認知症が重度に進行すると、自分の意思を表明することができないため、介護する家族の悩みは一様に大きくなります。
そうした姿を数多く見ている、現場の福祉関係者の間でも、延命措置に対して、懐疑的な立場の人も増え、尊厳死を法制化しようという流れの一つになってます。

医療機関で亡くなる人が8割を占める現在、「延命治療」を拒む人は増えています。

延命治療を望まない尊厳死宣言

この業務を取扱い、家族を看取った体験から尊厳死宣言書を作成する方々の気持ちや、表明する意味の大きさを痛感しています。
特に金銭的な負担については、ネットの情報が表面的で実際のケースには、あてはまらないことも多いことがあると知らされました。
75歳以上の後期高齢者については、医療費の自己負担の上限があり、外来で1万8千円入院で5万7千6百円と云うのは多く知られています。しかしその範囲で済んでいる人は殆どいないそうです。相談者の方と面談の際に教えてもらったケースはお父様が、当初は4人部屋で入院されていたようですが、いびきが大きく周りの方々が寝られないと苦情になり、なくなく個室に移ったものの差額のベッド代が月に12万円もかかり、保険適用外で苦労されたようです。その後、胃ろうになり四人部屋へ戻り差額ベッド代の負担はなくなったもの毎月10万円は支払っていたそうです。
別の相談者のお話では、人工呼吸器の装着は4人部屋では機器が収納できず、個室になり差額ベッド代を加えると月14万円の負担だったとのこと。
これが、短期間の入院であれば負担も少なくて済むのですが、長期に渡ると厳しさが増していきます。
自分がどんな状況で、病院に運びこまれるか分かりません。延命治療をして家族に負担を掛けたくないものです。日々の健康管理に加え、いざと云う場合のことを想定して普段から話合いを行ったり、尊厳死宣言を活用したいものです。

尊厳死宣言公正証書について

60代の男性でしたが、実母を一昨年に亡くされたそうです。元々持病があって体は弱く、一旦入院されてから退院し自宅療養中に倒れられ、救急搬送されて2年弱入院期間があったそうです。お父様はお若くに亡くなられ、お母さまはおひとりで生活されていたとのことでした。
病気の治療方針については特にお母さまと話はされなかったようです。救急搬送の際にはご近所に住んでいたお母さまの妹も駆けつけてくれたそうです。医師からは自立呼吸が難しくなるから人工呼吸器の装着についても、考えいて下さいと伝えられたそうです。そして装着した場合は入院が長くなるケースがあるとの説明もあったそうです。

その時の判断を誤ったと話をして下さいました。単純に死なせるのは可哀想だし、叔母様からも治療費は出すから何でもしてあげて頂戴と頼まれた手前もあって、あまり深く考えず対応したことが結果的には延命治療となって時間的にも金銭的にも身体にも大きな負担だったそうです。
チューブに繋がったお母様をみて、そこまでして生きたかったのかなぁ、そこまで看病したと自己満足したかっただけなのかなぁと何度も自問自答し苦悩する日が多かったそうです。人生で一番辛い時期だったそうです。その反省を踏まえて自分は尊厳死宣言を作成すると決めたそうです。

医療が人命優先であることはわかりますが、医師をはじめ医療機関は人工呼吸器をするとどうなるか等、家族の今後の負担についても、もっと深く考えて説明をして欲しいと思います。誰しもその選択を迫られたとしたら、感情的になり冷静な判断は難しいのではないでしょうか。
特に身近な経験もなく、必要であるからと尊厳死宣言を作成される方もおられますが、今回のように自らが尊い経験をされ作成される方もいらっしゃいます。 
家族に心配をかけないように日頃から、病気については治療方針や希望を伝えておいた方が安心できますね。