遺言書をカバーできる家族信託

不動産管理の認知症対策に有効な家族信託ですが、遺言書の弱点もカバーできます。
旦那さんが、自分の亡くなった後はアパート収入を子供達でなく奥様の老後の資金としてだけに使ってもらいたいと思った場合、遺言書で奥様を指定するのも有効ですが、遺言書が書き換えられてしまったり、奥様が認知症を発症してしまった場合は奥様にだけに、アパート収入がいくのは大変難しくなります。
そして、売却することも、叶いません。

こういったケースにでも家族信託は有効です。遺言書をカバーする機能があります。
本人の認知症対策だけでなく、配偶者の認知症対策にも有効です。

家族信託、遺言信託?

現在、メガバンクを中心に新聞広告で「遺言信託」というワードを多く見かけるようになりました。
お客様から、家族信託と同じ?と質問をうけることもあります。
そのサービスをホームページで確認すると、家族信託と違い、遺言書の作成を支援することと、その遺言書を預かりし、お亡くなりになられた後、その財産の不動産や株式について遺言執行手続きをするサービスのようです。

土地の処分や運用をその銀行グループの不動産会社が手掛けるため、安心感があると思います。
また株式や有価証券についても、グループの証券会社や、金融会社で運用できることにもメリットがあるようです。

複数の資産を運用されている方にとっては、使い勝手のいいサービスであると思われます。

家族信託をするタイミングは

不動産管理の認知症対策に有効な家族信託を組成するのはいつ頃がいいのでしょうか。

問題の顕在化と対策のタイミングで決まってきます。認知症を発症すると法律行為は制限されるため、その後成年後見人が就任しますので家族信託の組成はできません。
では、健康な状態でを考えると、そんな心配しなくとも、とか、早目に対策しそのせいでかえって身体を悪くしそうで縁起が悪いと、中々、踏み出せません。
合理的に考えると、健康にすこしでも不安を感じた頃がいいのではないでしょうか、色々と制度も研究できたり他の方法も検討ができると思います。
きっかけを決めておけば、案外スムーズに運ぶことが多いです。

ただ、注意しなければいけないのは、人によって健康に不安を感じるのに差があります。病気もなく頑強な人は、病気が悪化し入院した頃を、不安に感じた頃と認識してしまいます。せめて他の方法も十分に考えられる時間は必要です。
家族信託の契約期間も最長30年となっていますので、早目に組成する方が一番望ましいのですが、健康に不安を感じる頃よりも、例えば70歳になったからとか、配偶者に健康不安になったときとか、目安を決めておくのもいいタイミングの設定方法だと思います。

家族信託には遺言と同じ機能があります

配偶者を亡くされ、現在は近くにいるお子さんと、県外に出て行かれ正月に帰省するお子さんのお二人です。
近くにいるお子さんには、日頃から病院の通院の送迎や日用品の買い物の送迎もやってもらっているので、近くのお子さんに多く財産をあげたいとの希望です。
遺言書に書いて、県外にいるお子さんに悪く思われたくない気持ちがあり、遺言書を書くのを躊躇しておりました。
駐車場で賃貸している土地を、近くのお子さんへ差し上げたいとの意向、家族信託で契約することで遺言と同じ効果を説明、
近くのお子さんと家族信託契約をし、県外にいるお子さんには生命保険の受取人になってもらうことで円満解決。
遺言書をためらっていた分、いい結果に、本人も胸をなでおろされたご様子でした。
遺言と同じ機能の面もあり、家族信託は使い勝手のいい制度であると再認識しました。

家族信託と他の制度

契約期間

法定後見人裁判所の選任~本人の死亡
任意後見人裁判所の選任~本人の死亡
家族信託の受託者契約の設定期間

権限

法定後見人同意・取消身上監護/財産管理
任意後見人身上監護/財産管理
家族信託の受託者契約の財産管理(最長30年)

悪徳商法予防

法定後見人取消可能
任意後見人なし
家族信託の受託者信託設定の場合は防げる

制度の利用料金(財産の多寡で変わる)

法定後見人2万円~4万円(専門家就任の場合)
任意後見人1万円~3万円
家族信託の受託者なし

今後も掲載していきたいと思います。

家族信託を考える

不動産管理の認知症対策で例えば、アパートを父親から息子に生前贈与した場合は、息子さんに贈与税が発生します。
そして不動産の名義変更による登録免許税も発生します。更に不動産取得税が発生します。
所有権が息子さんに変わった場合に、息子さんがアパートを売却したり、借入の担保として差入れする心配があります。
また、アパートの収入を息子さんが使い込む心配もあります。

アパートの管理が息子さんで、アパート収入は従来通りお父さんに入ってくる 自益信託型の家族信託を設定した場合、登録免許税は贈与(20/1000)から3/1000と割安になります。不動産取得税はゼロ、かかりません。契約期間も設定すれば30年の契約が可能です。そしてお父さんがなくなった後に相続手続すれば、契約期間中にお父さんが認知症になっても修繕契約や賃貸契約を息子さんが代わって行えるようになります。

そう云ったことで、贈与によるアパートの売却や金融機関への担保の差入れ等のリスクを回避し財産を守りことも可能です。
ただデメリットもあり、それは信託計算に基づき税務申告が必要になります。従来の申告をご自分でなされていらっしゃる方は税理士等に依頼しなければならないケースが多くなります。普段から税理士を利用されている方はそのままの利用でも対応可能です。
あとは、家族のいる方でないとこの制度はメリットがありません。

平成18年の信託法の改正によって家族信託が多く利用されるようになりました。高齢化社会が進展し社会問題化している、今、不動産管理の認知症対策では家族信託は大変に有効であると思います。

不動産管理の認知症対策には家族信託が有効です

8日に掲載しましたが、沖縄県の65歳以上の高齢者が30万人を突破しました。
そのうち5万9千人余りが「要介護」の認定をうけ、そのうち4万2千名が認知症と判定されています。
沖縄県では、これから他府県に比べて65歳以上になる高齢者が増加していくことが発表されています。

認知症を発症すると、法律行為が制限されます。預貯金を引き出したり財産に対する行為も簡単にはできません。
不動産については特に不便を強いられます。不動産を貸したり、修繕契約をしたり、売却することもできなくなります。
もちろん購入することも建築することもできません。生活全般が規制されます。
老後の蓄えの預金の出金や、老後の資金として不動産を売却して充てることも難しくなります。
不動産を所有される方は、これまで相続対策が重要だと言われてきましたが、これからは認知症対策を先に考える時代になってきました。

資産を有しながらも、平均寿命の延びによって高齢化し資産管理が困難である方が増えています。
県内でも高齢化が進んでおり、認知症も社会問題化しています。健康のうちに対策することが必要になってきています。
そこで、出てきたのが「家族信託」です。アパートの例で言えば不動産を管理する名義は息子にして家賃収入は父親に従来通り入るようにする。
修繕や賃貸の契約を息子ができるようになります。また売却の権限を与えて将来売却ができるような形態もとれます。

認知症対策で生前贈与もありますが、多額の贈与税が発生し贈与を受けた側が自分の名義になったとたん売却をしたり借入の担保に入れる恐れもあり一色単にはお勧めできません。新しい時代にあった家族信託の制度を利用すれば、不動産管理の認知症対策としてもとても有効だと思われます。