上司と部下でも「横の関係」を!

冒頭から「何を言ってるんだ?」と思われる方も多いと思います….。
アドラーは友人、夫婦、親子あらゆる人間関係は「縦の関係」より「横の関係」が望ましいと提唱しています。
一般的に上司と部下は「縦の関係」です。最近は「ほめて育てる」が多くなっていますが、アドラーはそれに対して懐疑的です。
なぜなら、ほめると云う行為は「縦の関係」の典型的な行為であり、ほめる行為は能力がある人が能力のない人に対して行う分かりやすい行為だからです。
例えば
上司 「A君、前回、訂正を頼んでおいたプレゼン資料はまだ?いつまでかかんの?」
部下 「すみません、一応できました。チェックしてもらってよろしいでしょうか?」
上司 「うん」
…..
上司 「まぁまぁいいじゃないか。私の指導したポイントも押さえられているし。普段から言っている利益の重要性が守られていて、いい出来だよ」
部下 「部長のお陰です」
上司 「うん、君もやればできるじゃないか。どっか見どころがあると思ってたよ。仕事はねぇ、こう云う風にやればいいんだよ。それで進めてくれ。頑張りたまえ。」
部下 「頑張ります。」

縦の関係では 相手の操作を目的にコミニュケーションをとっています。
この会話で際立つのは、上司の部下の仕事への評価です。何が良かったかのか悪かったのかが適格に表現されていません。
上司は指導に従った点をふまえ、普段から命令していることを守ったこと、根拠のない、どこか見どころがある等仕事の評価を行わず、単にほめたと云うことです。

上司はほめることで自分を好きになってもらい、嫌われたくもない、部下はお世辞を言うことで気に入られたい等々、責任に違いがあっても、立場が違っても、社会人としては対等です。
上司も最初から上司ではありません。上司も部下もお互いに尊重しあえてこそいい関係は構築されます。

上司 「A君、一昨日に再考するように指示した。プレゼン資料の進み具合はどう?」
部下 「はい、ひと通り出来たので、再度チェックをお願いします。」
上司「うん」
……
上司 「先方ヘのノメリッも十分に反映されてるね。当社の取分をもっと貰いたいところだが、これが上限って云う判断?」
部下 「新規の取引で継続も見込まれます。このラインより上げればのってこないと思います。」
上司「うん、そうか、そこは普段から接しているA君の感触が頼りだね。わかった。これで、すすめよう。」
部下 「はい、ありがとうございます」
上司 「今のように、当社も顧客のことも考え利益を設定するのが重要なんだ いい感性を持ってるよ。それが君の武器になる。」
部下 「自分でもベストな設定のつもりです。部長に分かってもらいよかったです。」
上司 「これからもその感性を大事にだ。それから、資料の訂正が終わったら私から声をかけなくても自分から報告できたらもっといいね。」
部下 「申し訳ありません、次からは自分から報告いたします。」

「縦の関係」から「横の関係」に変更するのは簡単ではありません。上司も明確に仕事を判断して指示すること、そして部下も指示に沿って進めていけば効率もよくなります。
部下も上司も立場は違いますが、会社員と云う点では一緒です。お互いに理解するには、お互いの思いを共有することが大事です。
上司は部下の考えに耳を傾け、部下は上司の考えを理解する、齟齬があればお互いに時間をかけて理解するようにする。
大変に手間のかかることですが日々の意識が重要です。
今日はダメでも明日は少しずつ、明後日も少しずつ、改善が積み重なって風通しが良くなります。
風通しが良くなれば、いい社風が創られます。
いい社風が創られれば、いい風土が築かれます。
いい風土が築かれれば、新しい文化が生まれます。
文化は人間を成長させます。
まずは「横の関係」から始めていきましょう。